もうひとつの恋
最後にこれくらいの嫌味は言わせてほしい。


俺はずっと我慢してきたんだから……


「ありがとな?桜井……」


部長はそんな俺の嫌味に何の反応もせずに、哀れんだ顔で俺に礼を言い続けた。


そんな風に言われたら、もう何も言えないじゃないか。


「健太くんはお前にパパになってもらいたかったって言ってた……

ショックだったよ……

でもさとみに本当の親子なんだからいつか健太もわかってくれるって言われて……

凹んでる場合じゃないなって思ったんだ

お前がせっかく作ってくれたチャンスなんだから、しっかりしなきゃって

だからこれから健太くんがなついてくれるまで大変だと思うけど、俺がんばるから

お前に恥ずかしくないように……

それとあの子の父親として、お前にきちんと認めてもらえれようにさ」


部長はしっかり覚悟を決めたんだって、俺は思った。


もうぶれることはなさそうだな……と少しだけ安心する。


もういっか……


さとみさんからもう卒業出来た気がする。


その証拠に部長からさとみさんや健太の話を聞いても、今までのように胸が痛まなくなっていた。


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