もうひとつの恋
新しい恋を見つけて、やっと前に進もうって思える自分がいる。


「桜井!お待たせ」


部長のことを考えながらぼんやりしていると、急に美咲さんの声が耳に飛び込んできて、俺は現実に引き戻される。


「あっ……あぁ、美咲さん

久し振りですね?」


慌ててそう言うと、美咲さんは少し眉をひそめて言った。


「なになに?

もしかしてまたさとみのこと考えてたとか?」


「いや……さとみさんというより部長のことですかね?」


それを聞いた美咲さんの顔が一瞬嬉しそうに見えた。


「そうなんだ……

もしかして、桜井……
ふっきれたとか?」


相変わらずの直球な物言いにも、最近はすっかり慣れたものだ。


「そりゃあ……まあ

いい加減ふっきらないと、あの家族に会いづらいですしね?」


「そうだよね?

じゃあもうさとみのことは、すっぱりキッパリ諦めたんだね?」


しつこいなぁと思いながら、一応俺の恋をずっと応援してくれていたわけだから、きちんと伝えなきゃと思う。


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