もうひとつの恋
いつものように、笑い飛ばしてくると思っていた俺は、何か変なこと言っただろうか?と自分の言葉を思い返した。


それでも何も思い当たらなくて、俺は仕方なく俯く美咲さんに呼び掛ける。

「美咲さん?
どうかしたんですか?」


ハッとしたように俺を見た美咲さんは、慌てたように話し出した。


「そっ……そうなんだ!

そうだよね?お母さんだって心配だよ

30近くになる息子が、結婚どころか、彼女もいないんじゃねぇ?

あはっ……あははは……」


明らかに動揺してる。



そして挙動不審だ。


俺は何がそんなに美咲さんを動揺させたのかが、全くわからなくて、仕方なく話の続きをしてみた。


「その人は27歳って言ったかな?

有楽町で販売の仕事してるらしくて、お袋が言うには控え目で清楚な感じだって言うんですよ……

でもどうなんですかね?

会ってみて良さそうなら、付き合ってみた方がいいと思います?

もうこれから先、さとみさんみたいに一目惚れってことはないと思うんですよねぇ

だから出会いは大切にした方がいいのか?とか考えちゃって……

まあ向こうが俺を気に入るかどうかなんてわかんないから、余計な心配かもしれないですけどね?」


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