もうひとつの恋
こんなそそっかしいところもこの人の魅力の一つだ。


そんなことを思っていると、横から頭を小突かれた。


「お前、なぁに笑ってんだよ!
こっちは真面目に困ってんだぞ!」


ギロリと睨まれて、俺は小さく「すみません」と謝った。


課長はポケットから携帯を取り出すと電話をし始めた。


「あ、もしもし、俺!

うん、実は今日の会議に使うはずの資料忘れてきちゃってさ

そうなんだよ

たぶん書斎の机の上に置いてあるはずなんだけど……

あった?良かった。


そしたら悪いんだけどさ

会社に届けてもらってもいいかな?

ごめんな?うん、じゃあよろしく」


どうやら電話の相手は奥さんで、資料を届けてもらうらしい。


俺は尊敬する課長の奥さんがどんな人なのか、すごく興味があった。


「課長、奥さんが届けてくれるんですか?」


「あぁ、うん、助かったよ」


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