もうひとつの恋
彼女はメニューを開いて俺に渡すと、もうすっかり自分のペースを取り戻して何を頼もうか考えている。


強引で切り替えの早いところは美咲さんとかぶるけれど、自分勝手なところはまだ子供だなと思った。


とりあえずお互いビールを頼むと、つまみは彼女に選んもらう。


色とりどりの創作料理がメニューに並んでいて、どれがいいのか全く見当もつなかったからだ。


彼女はメニューを見ながら次々と注文すると、満足したように、改めて俺に向き直る。


「桜井さんて28なんですよね?

私と一つしか違わないし、話も合いそうだから、試しに付き合ってみませんか?」


悪びれなくクルクルよく動く目をして、そう言ってくる彼女を見ていると、何だか結衣に似ているような気がした。


彼女と付き合ったとしても、きっと恋愛感情に発展することはないだろう。


結衣に対してそうだったように……


俺は彼女の甘い期待を裏切るべく、正直な今の気持ちを伝えた。


「悪いけど無理かな?

君のことは素敵な女性だとは思うけど、俺の好みじゃない……

それに今……少しだけ気になってる人もいるから……

申し訳ないけど君と付き合うつもりはないんだ」


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