もうひとつの恋
一目惚れに近い彼女の俺への気持ちを聞いて、俺はかつてのさとみさんへの気持ちを思い出して胸が痛くなった。


俺はなんて浅はかだったんだろう。


そんな気持ちもなかったのに、相手の気持ちも考えないで、軽く会って断ればいいやだなんて……


母を説得するのが面倒だったからなんて、言い訳にもならないじゃないか……


いくらさとみさんが部長とうまくいったからって、他の人と付き合えばこの焦燥感がなくなるんじゃないかなんて思った俺がバカだったんだ。


俺は自分で自分の分身を作り出してしまったような気がして、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


結果的に小嶋さんも美咲さんも傷付けてしまったことになる。


結局、俺も自分ことしか考えてなかったんだ。


部長のこと言えないじゃないか……


「君の気持ちも知らないで、無神経にここに来てしまって、本当に申し訳なかったです……

実は俺……最近振られて……

だからまだそんな気にならないってお袋には断ったんだけど、全然聞いてくれなくて……

でも、もっと真剣に断るべきでした

すみませんでした!」


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