もうひとつの恋
今度は俺が謝る番だった。


頭を深々と下げて彼女の許しを乞う。


そんな俺を見て、さっきまでポロポロ涙をこぼして泣いていた彼女が、顔を上げて切なげに笑った。


「桜井さんこそ頭を上げてください

桜井さんにそんな気持ちないのわかってたのに、一目だけでも会いたいなんて……思った私が悪いんですから……

私の方こそ嫌な気持ちにさせてすみませんでした……」


代わる代わる謝っているうちに、このやりとりが急に可笑しくなって、お互い顔を見合わせて笑い合う。


「もう謝るのはやめません?」


「そうですね?お互いに自分の気持ちは伝えたわけだし、謝るのはもうおしまいにしましょうか?」


「はいっ!そうしましょう!

あの……もし良かったらなんですが……

図々しいお願いなんですけど、出来たらお友達になってもらえませんか?」


彼女はそう言ってくれたけど、俺は友達になるって言っていいものかどうか、少しだけ躊躇した。


彼女は俺の思いを察したように、他意はないんだと言い訳する。


「せっかくこうして会えたのも何かのご縁だと思うんです

それを振られたからってこれっきりにしちゃうのはもったいない気がして……」


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