もうひとつの恋

彼女のだいぶくだけた話し方に、安心していたのかもしれない。


けれど彼女は目をパチクリさせて、俺の顔をまじまじと見ながら言った。


「あのぉ……それ今、私に聞いちゃいます？

仮にも私、さっき桜井さんに振られたばっかりなんですけど……

いくら友達になったからっていきなりハードル高すぎやしませんかね？」


俺はそれもそうだと慌てて彼女に平謝りした。


「ごめん！確かにそうだった……

なんかすっかり和んじゃって気が緩んでた

ほんっとにごめん！」


必死に頭を下げて謝っていると、頭の上の方でクスクス笑う声が聞こえた。


――あれ？


なんか……笑ってる？


驚いて勢いよく顔を上げると、口元を押さえて肩を揺らしながら、必死に笑いを堪えている彼女の姿が見えた。


こいつ、いい性格してんな……


俺はとりあえず怒るよりも、彼女を傷つけたわけじゃなかったことにホッとした。


「で？なんで笑ってんの？」


半ば呆れながらそう言うと、彼女はまだ可笑しそうに目尻を下げながら俺を見る。


「いや……桜井さんやっぱりいい人なんだなぁと思って」