もうひとつの恋
「絶対バカにしてんだろ?
ひでぇなー

俺……傷付いた……」


わざとらしくガックリと項垂れながらそう言うと、彼女はまだ笑いが収まらない。


「アハハッ、だって桜井さんたらもうすっかり友達モードで、他の女の人の相談までしてくるから、悔しくて意地悪言っちゃいましたよぉ

だけど本当は嬉しかったんです

私、今まで男友達とかいなかったから、こうやってふざけたり、憎まれ口叩ける男性って初めてで……

ちょっと新鮮だなぁって……フフッ」


おいおい新鮮ってなんだよ……


そうは見えないけどな……


最初から結構攻撃的だったし、俺以外にもたくさん男友達がいるような雰囲気に見える。


それにしても美咲さんといい俺ってそんなに言いやすいキャラなんだろうか?


なんだか自分が情けなくなって、俺は少しだけ落ち込んだ。


そんな俺の姿を楽しむかのように彼女はまだ笑っている。


意外と笑い上戸みたいだ。


散々笑って気がすんだのか、彼女は急に真面目な顔をして俺の目をしっかりと見つめた。


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