もうひとつの恋



朝、職場で打ち合わせをしていると、疲れた様子の課長とすれ違った。


「あっ、課長!
おはようございます

……なんか顔色悪いですけど大丈夫ですか?」


青白い顔をした課長を覗き込んでそう聞いてみる。


「あー、おはよ

ちょっと寝不足でな?」


寝不足?


やっぱり昨日あれからなんかあったんだろうか?


納得したはずの不信感が、また甦ってくる。


「昨日、あれからやっぱりなんかあったんですか?」


どうしても気になって、課長をそう問いただした。


けれど課長はすました顔であっけらかんとその質問に答える。


「友達の相談に乗ってたんだけど、思ったより長引いちゃっただけだよ」


友達?怪しい……


そう思ったのが顔に出ていたんだろうか?


なにかを察したように歩きかけた足を止めて振り返る。


「浮気じゃないからな?」


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