もうひとつの恋
はぁ……
何で俺がこんなことしなきゃなんないんだろう?
会社帰りに、俺は美咲さんのマンションの傍で彼女が帰ってくるのを待っていた。
いくら美咲さんに会えないからって、やっぱり待ち伏せは引かれるよなぁ……
だけど電話にもメールにも全く応答がない以上、直接会いに来るしか術はない。
それにしても……
以前、確かに美咲さんちには来てるはずなのに、場所がいまいちわからなかった。
こないだ母の紹介で初めて会った小嶋さんという女性に、連絡が取れないなら会いに行けばいいと背中を押されて来てみたはいいけど……
あの時は突然のことで慌てて帰ったせいなのか、記憶が曖昧だった。
あの頃の俺は、美咲さんに全く興味がなかったんだと改めて思う。
仕方なくさとみさんに美咲さんの自宅の場所を聞いて、今に至るんだけど。
やっぱり早まったかなぁ……
ここに来たことを後悔し始めていた。
美咲さんに会って何を言えばいいのか俺はまだ迷っていたから。
だけど会いたいって気持ちは嘘じゃない。
小さく息を吐いてマンションの方に顔を向けると、ちょうど誰かが入り口に向かって歩いてくるのが見えた。