もうひとつの恋
けれど正直、このタイミングでの彼女からの電話はきつかった。


仲直りどころか会うことさえ出来なかったんだから……


今の俺にはさとみさんに上手く説明できる自信がない。


「えっと美咲さんちの最寄りの駅ですけど……」


仕方なくモゴモゴとそう伝えると、さとみさんは明らかに不満そうな声で言った。


「あれ?これから?

もうてっきり美咲んちについてる頃だと思ったのに……」


いや、帰るとこなんだけど……


そう思いながらも、そうとは言えず、俺はさとみさんに小さな嘘をつく。


「いや、行ったんですけどね?美咲さんなかなか帰ってこなくて……

会えなかったんですよ……

俺、明日も早いからまた今度にしようと思って、今帰るとこなんです」


「えぇっ?そうなの?おかしいなぁ……

この時間にはいつも帰ってるはずなんだけどなぁ

私から美咲に電話しとこうか?」


うわっ!やばい……そんなことされたら、嘘がばれる……


「いやっ?あの……大丈夫です!

改めてちゃんと行きますから……

ほらっ、美咲さんて人からなんか言われるとあまのじゃくだから、ますます頑なになるかもしれないし、ねっ?

だから大丈夫ですよ?」


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