もうひとつの恋
「もしもし?桜井さんですか?
おはようございます!
小嶋です」
日曜の朝の、まだ夢の中にいた俺を叩き起こした電話の主は、母に紹介され一度だけ会ったことのある小嶋さんだった。
「……」
俺はまだ起きない頭で、あの小嶋さんだと理解するのに、かなりの時間を要する。
「あれ?桜井さんですよね?
聞こえてますかぁ?
もしもーし」
うるさい……
朝からこのテンションはなんなんだ……
貴重な休みの朝を台無しにされて、俺はかなり機嫌が悪かった。
「そんなでかい声出さなくても、聞こえてますよ……」
仕方なくまだ出ない声でそう言うと、小嶋さんはさすがに俺が機嫌が悪いことに気が付いたのか、少しだけ申し訳なさそうな声を出す。
「あっ!もしかして寝てました?
すみませーん、10時だからもう起きてるかと思って……
あの……怒ってます?
またかけ直した方がいいですかね?」
ここまで起こされて、またかけ直されるのも面倒だ。
「いや、もう起きたからいいですよ……
で?何か用だったんですか?」