もうひとつの恋
ベッドから起き上がり、キッチンに向かいながら俺はそう答えた。


冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、とりあえず一気飲みする。


体に水分が行き渡って、ようやくしっかり目が覚めた。


キッチンにある椅子に腰を下ろし、話を聞く体制を作りながら携帯を持ち直すと、小嶋さんがおずおずと話し出した。


「特に用ってわけじゃないんですけど……

こないだ私、桜井さんに彼女に会いに行けって焚き付けちゃったから、あれからどうなったのか気になって……

あの、会いに行ったんですか?」


さとみさんといい、この人といい、なんでこんなにお節介なんだ。


今は放っておいて欲しいのに……


俺は小さく溜め息をつきながら、もうどうでもよくなって投げやりな感じで答えた。


「会いに行きましたよ?

実際は見かけただけだけど……

他の男性と仲良くマンションに入っていくのを見て、帰ってきましたけどね?」


さとみさんには言えなかった事実を、あまり関わりがないからなのか、小嶋さんには話すことが出来た。


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