もうひとつの恋
は……ははっ……


美咲さんの隣にいるのが自分じゃなかったことが悔しかった時点で、気付くべきだった。


美咲さんを好きだってことに……


長い間、さとみさんに恋したせいで、恋が始まる瞬間を見逃していたのかもしれない。


美咲さんへの気持ちを認めてしまうと、モヤモヤしていた胸の内が、いつの間にかすっきりと晴れやかな気持ちになっていた。


「小嶋さん……ありがとう

俺、気持ち伝えてみるよ」


感謝の気持ちをこめてそう言うと、彼女はふてぶてしく言い切った。


「はい、そうしてください

それでもしダメだったら、また改めて慰めてあげますから」


はっ……彼女にはかなわないな?


かつて俺も大好きな人の幸せのために、自分の気持ちを押さえて背中を押した時があったけれど……


小嶋さんはその時の俺によく似てる。


だったらやるだけやってみることが、彼女のためになるんだってことを、俺は知っていた。


「その時はよろしく頼むよ」


俺はそう言って、美咲さんに自分の気持ちを伝えることを、ようやく決めることができた。


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