もうひとつの恋
俺は今、この前と同じ場所で、この前と同じように美咲さんを待っていた。
前回と同じ時間帯に帰ってくるんだとしたら、もうそろそろ姿が見える頃だ。
マンションの方に目をやると、ちょうど向こうからやってくる美咲さんの姿をとらえることが出来た。
――よしっ!!
そう気合いを入れて、俺は美咲さんの方に近づいていく。
声をかけようとしたその時、またもやあの男性が美咲さんの後ろから現れた。
先日と同じように楽しそうに笑いながら、マンションに入って行く。
だけど今回は、俺は逃げも隠れもせず、ありったけの声を出して彼女を呼んだ。
「美咲さん!!」
彼女はその声に反応して立ち止まり、ゆっくりと振り向いた。
「えっ!?ちょっ……
さっ、桜井?なんで……」
俺の顔を見るなり、慌てたようにそう言うと、隣の男性が美咲さんにそっと耳打ちする。
「何?知り合い?」
美咲さんが小さく頷くと、彼は俺を見て軽く会釈をしてから、また美咲さんに視線を戻す。