もうひとつの恋
「ほんとにそう思ってます?」


「おもっ、思ってるに決まってるじゃない!

さとみばっかり追いかけてて、最近あんた、恋愛してないんだから」


――あぁ、もう素直じゃない!


「言っときますけど、気になる人って言うのはさとみさんじゃないですから

俺だって恋愛くらいしますよ」


まぁ、そうは言っても最近気が付いたばかりの気持ちではあるけど、今まさにあなたに恋してますから。


「そ、そんな相手がいたの?

さとみにだって振られたばっかりなのに……」


美咲さんが後退った分の距離をまた縮めると、彼女の背中が壁に当たる。


それ以上後ろに下がれないことがわかると、美咲さんは瞬時に体を固くした。


そんな彼女を見下ろしながら、俺はようやく気持ちを伝える。


「美咲さんですよ?」


「……え?

なっ、なに言ってんの?

私なんか8歳も年上だし、清楚でも控えめでもないし、だっ、だいたいあんたのママが許すはずないじゃない!」


「そんな美咲さんを好きになったんですよ

それにうちの母親は関係ないでしょう?」


「好きって……

あの、桜井?

そういうことはよく考えてから言いなさいよ?

あたしの歳で好きとか言われたら、イコール結婚てことなんだよ?

わかって言ってる?

だからお母さんの印象は大事なんだから!」


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