もうひとつの恋
なんか……


俺、今すげー幸せかも。


やっと美咲さんの気持ちを確認できたことと、自分の気持ちを伝えることができたことで、俺はホッとしていた。


――あれ?


なんか大事なことを忘れてるような気がする。


なんだっけ?


あっ……!?


「美咲さん……

さっき一緒にいた人……誰なんですか?」


そうだった、すっかり忘れていたけれど、美咲さんの部屋に消えていった男性。


美咲さんとはどういう関係なんだろう?


もし……俺のことを忘れようとして、付き合い始めたとかだったら……


きちんと説明して別れてもらうしかない。


俺は覚悟を決めて、美咲さんにそう聞いた。


美咲さんは俺の胸に埋めていた顔をゆっくり俺に向けると……


「えっ!?……兄だけど?」


と、さらっと言った。


――えぇっ!?


兄……って……


俺はお兄さんにヤキモチを妬いていたのか……


ガックリ項垂れていると、彼女は不思議そうに言った。


「なんで?どうしたの?」


俺はその顔を見て、苦笑いしながら「なんでもない」と、一言だけ伝える。


まだ不思議そうな顔をしている美咲さんに顔を寄せると、優しくそっと唇を重ねた。


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