もうひとつの恋
食べ終えて、リビングで寛いでいると、洗い物を終えた美咲さんが、カップを二つ持ってこちらにやって来た。


「はい、食後のコーヒー」


持っていたカップを一つ、俺に手渡してくれる。


「ありがとう」


それを受け取って、一口啜ると、コーヒーも豆にこだわっているのか、下手な喫茶店なんかよりよっぽど美味かった。


もしかして、美咲さんて意外と家庭的なのかな?


そんなことを思いながら、ぼんやり美咲さんを見つめていると、彼女がそれに気がついてふいっと顔を反らした。


あーあ……


いつになったら、美咲さんとあんなことやこんなことが出来るんだろう?


俺を意識し始めた彼女は、いつでも身を固くして触るなオーラ全開な気がしていた。


相変わらず憎まれ口を叩くか、もしくは恥ずかしそうにモジモジするかのどっちかで、甘い雰囲気なんかになるのは到底無理だった。


どうしたらもっと恋人らしく出来るのか……


俺の最近の悩みはもっぱらそこだった。


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