もうひとつの恋
「バカ……

あたしがそんなこと、あんたにいつ望んだのよ

海外になんか一人でいつでもいけるもの

桜井としか行けない温泉のがよっぽど楽しみだよ?

桜井が私に相応しくないって思うなら、私だって本当はあなたにはもっと若くて可愛い子の方がいいんじゃないかって思うもん」


ニッコリと笑って、美咲さんは俺の顔を両手で包んだまま、そっと触れるだけのキスをした。


「私達は旗から見たら不釣り合いなのかもしれない……

だけど釣り合うとか釣り合わないとかじゃないよね?

お互いがそばにいたいって思ったからつきあったんだから……」


そうでしょ?と切なげに微笑む彼女を見て、俺は確かにそうだと思った。


俺も美咲さんも釣り合わないことなんか最初からわかってる。


だけどそれでも会えないことが苦しくて、相手に他の誰かがいるのが辛くて、やっとお互いの気持ちに気づいたんだから。


「そうだった……

ごめん……

そばにいてくれるだけでいいって思ってたはずなのに、バカだよな?俺」


「ほんと、バーカ!」


いつもの笑顔に戻って、相変わらずの言い方で……


それがとても心地よくて安心するんだってことを俺はようやく思い出した。


だけどやっぱり拒まれたことには納得いかなくて……


俺は改めて美咲さんを押し倒した。


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