もうひとつの恋
「分かってくれればいんですけどね?

まあ……最初からこんなことになるとは思ってなかったんで……

それはほんとにすみませんでした

美咲さんが思ったより締め付けるから……」


「ちょっ!あんた何言ってんのよ!

バカじゃないの!?」


ますます真っ赤になった顔を隠すようにそっぽを向く美咲さんは、俺をまた欲情させる。


俺に背を向けてる美咲さんの体を、後ろから優しく包み込むように抱き締めた。


それから美咲さんの耳許でそっと囁く。


「俺、美咲さんのことちゃんと好きだから……

もっと自分に自信を持ってほしい」


美咲さんはくすぐったそうに首を竦めながら


「ん……ごめん」


と甘い声で謝ってくれた。


それから美咲さんは、小さな小さな声でポツポツと話し始める。


「さとみをさ……

ずっと好きだった桜井をそばで見てきたから、私を好きって言ってくれても、いまいちピンと来ないというか……

自信が持てなくて……

ごめんね?」


確かに俺がさとみさんを好きでいた間、ずっと一緒にいたわけだから、それも仕方のないことだ。

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