もうひとつの恋
そう言われてみればそうかもしれない。


俺は美咲さんといる時の方が、素に近い自分を出せているような気がする。


「そうだとしたら、俺はさとみさんにフラレて良かったかも」


あっけらかんとそう言うと、美咲さんは驚いたように目を見開く。


「なんで?

あんなに好きだったのに?」


「美咲さんのいうことが本当なら、俺はさとみさんの前ではいつでもかっこよくしてなきゃいけないわけでしょ?

たぶん、彼女に好かれたくて無理して疲れちゃうかもしれない

だけど美咲さんといると、俺は力入れないで自分らしくいられるし、なにより素直に甘えられるから……

だからさとみさんにフラレたことで、美咲さんと付き合えるようになったんなら、感謝しなきゃ」


抱いていた腕にギュッと力をこめて彼女を抱き寄せると、それに応えるように美咲さんも俺の手に自分の手を重ねた。


ついさっきまで、美咲さんに欲情することに罪悪感を覚えていたのが嘘のように、こうやって抱き締めただけで俺の下半身は反応してしまう。


美咲さんもそんな俺の変化を背中で感じ取ったのか、ビクッと体を震わせた。


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