もうひとつの恋
「あの美咲が桜井とねぇ……」
「うふふ、私はちょっぴり気づいてたけどね?」
部長とさとみさんが、口々にそう言いながら、俺達を交互に見比べている。
さとみさんにはいろいろ相談もしてたから、薄々俺達のことに気づいてたみたいだけど、部長にとっては寝耳に水で、かなりの衝撃だったようだ。
大学時代から美咲さんを知ってるだけに、部下の俺と付き合ってることが不思議でしょうがないのかもしれない。
「それで実は今日は、俺達の証人になってもらいたくて、お願いに来たんですけど」
そう言って鞄から一枚の紙を取り出すと、部長とさとみさんの前に広げて置いた。
今度は二人ともが驚いた顔をして、その紙と俺達を見比べる。
「えっ……お前ら、もう結婚すんのか!?」
「ずいぶん急なのね?
もしかしてなんか……あった?」
婚姻届をいきなり出されて動揺したように、部長達はそう言った。
確かに付き合ってから日は浅いけど、知り合ってからは長いわけだから、そんなに驚かなくても。