もうひとつの恋
「そんなに信用ないですか?

俺、たぶんさとみさんのこと好きになった時から、若い子より熟女好きみたいですから」


思わずそう言ってしまってから、さとみさんの名前を出してしまったことを後悔する。


美咲さんはたぶん、そこが一番引っ掛かってたんだから……


「桜井ってさ……」


案の定、美咲さんは口を尖らせながら、俺を非難するときの口調になった。


「さとみの時はあの子の気持ちすごくわかってあげて、気が利いたこと言ってたくせに、あたしのことは全然わかってないよね?」


そんな風に拗ねる彼女が可愛くて、思わず肩を抱き寄せた。


「こっ、こんなんで誤魔化されないんだからっ」


真っ赤な顔で一生懸命怒ったふりをする美咲さんの耳許で、俺はそっと囁く。


「わからないからこそ、これから美咲さんをもっと知りたいんですよ」


「――ッ!」


「だから、結婚してくれませんか?」


「……ずるい」


「美咲さんと結婚出来るならズルくてもいいです」


ふ……と笑いながらおでこをコツンとぶつけると、美咲さんは恥ずかしそうに目を伏せた。


「バカ……」


そう言って、美咲さんは俺からゆっくり体を離すと、照れたように俺を見上げて、そのまま丁寧に頭を下げた。


「こんな私で良かったらよろしくお願いします」


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