もうひとつの恋
今から三時間前――
俺と美咲さんは久しぶりに休みが合ったので、いわゆるデートをしていた。
付き合って半年、あまりデートらしいデートもしなかったから、映画でもみようかという話になり、銀座に足を運んでいた。
「純ちゃん?」
後ろからそう声をかけられて嫌な予感がしたものの思わず振り返ってしまった。
「やっぱり純ちゃん!」
嬉しそうに満面の笑みで近づいてくるその人物を見て、俺は振り返ってしまったことを心底後悔した。
「結衣……」
そう名前を呼んでしまってから、ハッとして美咲さんの方を見ると、案の定固まってしまっている。
結衣は相変わらず空気が読めないみたいで、俺の目の前までやってきてから、ようやく美咲さんの存在に気付いたみたいだった。
ジロジロと美咲さんを眺めてから、俺に向き直って一言。
「純ちゃん、お姉さんいたっけ?」
「……ちょっ!」
待て待て、付き合ってるときに、俺一言も姉がいるなんていってないだろうが……
なんでこの娘は初対面の人間捕まえてそんなこと言うかな……
はあ……
めんどくさい……