もうひとつの恋
目をつぶり語っていると、それだけであの時のドキドキ感が俺を襲う。


「もっと聞きたいですか?
俺、語っちゃいますけど」


そんな気持ちを悟られないようにふざけた口調でそう言うと、課長は苦笑いしながらそれをやんわりと拒否した。


「いや……もういい

充分だよ、ありがとう」

でも……拒否されたにも関わらず、俺の妄想は止まらなかった。


課長に嬉しそうな顔で書類を届ける姿が目に浮かんで思わず口を滑らせる。


「自分の中では、課長ひとすじで、課長しか眼中にないって感じが健気で余計そそるんですよねぇ?」


そう言ってしまってから、ハッとして課長の様子を窺う。


軽く睨んでるのがわかり慌てて訂正を試みた。


「いやっ……あの……
決して変な意味ではなく……

可愛いなぁと思っただけ……です」


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