もうひとつの恋



美咲が妊娠した。


そう、待望の二人目だ。


だけど萌音のときと違って、彼女の顔は暗い。


「どしたの?嬉しくないの?美咲」


「や、嬉しいっちゃ嬉しいんだけどね……ハァ……」


「じゃあ、なんで溜め息ついてんの?」


「うん……」


いくら聞いても美咲は歯切れ悪く返事をするだけだ。


今日は水曜日――


美咲が病院に行くって言ってたから、早めに帰ってきた。


なぜか萌音は俺の実家に預けてきたみたいで。


まあ、うちの母も喜ぶからいんだけど。

今までにも何回かお泊まりに行ったことはあるし、心配ないだろう。


それより心配なのは、美咲の方だ。


「何?久々に二人になりたかったわけ?」


埒があかない状態に、俺は違う方向から攻めてみることにした。


この手の話は美咲の最も苦手とするところだ。


「はっ?な、何言ってんの?」


案の定、美咲の顔は赤く染まってる。


なんでこの人はいつまでたってもこういう話題にうぶなんだろうか?


可愛くていじめたくなるのは仕方ないよな?


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