もうひとつの恋
美咲の目から涙が溢れる。


それは瞬く間にこぼれ落ちて、俺の手を濡らした。


頬に触れていた指で涙を拭う。


そうしてやっと美咲は口を開いた。


「あたし……」


「うん」


「もうすぐ45歳になるし……」


「うん」


「高齢出産に…なるから……」


「……」


「不安で……」


「そっか」


「赤ちゃん出来て嬉しかったのはほんとだけど……でも……」


「うん、わかった……」


俺はそこまで聞いて彼女の頭を抱え込むように俺の胸に埋めさせた。


赤ちゃんは欲しい。


けど、美咲の歳だとリスクを伴う。


もしものことがあって、萌音に寂しい思いをさせることになったらって。


美咲は思ってるに違いない。


だけどせっかく授かった命を絶つことも出来なくて。


迷ってるんだと思った。


どちらを選択したとしても、苦しむのは美咲なわけで。


こういうとき、男親の限界を感じずにはいられない。


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