もうひとつの恋
「……お医者さんは何て?」


「リスクのこと……説明された」


「で?確率的には?」


「わかんないけど……

萌音の時よりは高いみたい……」


萌音の時でさえ、やはりギリギリ高齢出産だった美咲は、不安でいっぱいだったはずだ。


だけどあの時は初めての子供ということもあり、嬉しさのが大きくて。


二人で専門の病院を探したり、身体にも人一倍気を遣ったり、お互い二人三脚で頑張った。


前回と今回で違うことと言えば、やはり萌音の存在だろう。


あの子を母親のいない子にしたくないという気持ちはわからないでもない。


「先生は諦めた方がいいって?」


美咲は俯いたまま小さく首を振った。


「一緒に頑張りましょうって……言ってくれた」

「そっか……」


お医者さんは頑張ろうって言ってくれたけど、やはりリスクが怖いってことだろう。


俺はどうしたらいいのか考えた。


産んでくれと言うのは無責任だろうか?


だけど堕胎しろと言うのも辛い選択だ。


だけど……


任せるよとか、好きにしたらいいなんてことは絶対に言いたくなかった。


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