もうひとつの恋
ヤバイなぁ……とバツが悪くなり俯いていると、隣で吹き出しながら笑う声がする。


えっ?と顔をあげて横を見ると、課長がお腹を抱えて笑っていた。


「ひどいですよ、課長!」


まったく人の気も知らないで……


俺はあなたの奥さんに一目惚れしちゃったおかげで可愛い彼女と別れたっていうのに……


その件に関しては課長は全く関係ないのだけれど、自分の奥さんだというだけで安心しきっている課長が憎たらしくなる。


「だーかーら!

浮気なんかして、そんな可愛い奥さん泣かせたりしたら、許さないですからね?」


そう精一杯嫌みのつもりで忠告すると、課長は大丈夫だと言いつつも、こないだとは違う複雑な顔をして俺の言葉に耳を傾けていた。


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