もうひとつの恋
それは相手を尊重してるように見えて、自分で決断しろってことだ。


ふぅ……と溜め息をついて、美咲を見る。


彼女もまた大きな溜め息をついて、悩んでいた。


「美咲はさ……どうしたい?」


一応、彼女の意見も聞いておきたかった。


俺の考えを伝える前に……


「わかんないの……

欲しいけど……怖い」


まあ、当然だよな?


俺はもう一度、彼女を引き寄せてしっかり抱き締めると、耳元に唇を寄せて静かに言った。


「俺の意見も言っていい?」


腕の中で、彼女が小さく頷くのがわかった。


「俺は、生んで欲しいな」


ピクッと彼女がその言葉に反応する。


「萌音の時みたいに、ちゃんと協力するし……

美咲が不安にならないように、俺がいつも傍にいるからさ」


彼女はそれでも動こうとしない。


俺の胸の中で、じっと耳を傾けてるようだった。


「部長に話してさ

育休とかもらってもいいし」


「……っ!」


バッと顔を上げて俺を見た美咲は、明らかに驚いたような顔をしてる。


そこまでしなくてもって、その表情が物語っていた。


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