もうひとつの恋
フッと顔を緩めて彼女に笑いかけると、所在なさげに視線がさ迷う。


「俺は美咲にも生まれてくる赤ちゃんにも無事に元気でいてほしい

だからさ、二人で万全な方法考えてみようよ?

萌音の時だって大丈夫だったんだし、先生も頑張ろうって言ってくれてるんでしょ?」


「……う…ん」


「生まない選択したら美咲が後悔しそうで、怖いんだよ……」


「……え?」


「きっとその後悔は一生消えない

……赤ちゃんはさ、親を選んでくるって聞いたことない?」


「……」


「だったら美咲を選んできてくれたんだと思う

ギリギリまで頑張ってみて、それでもダメなら諦めよう?

俺は妊娠がわかった時点でいろんな覚悟が出来たから」


もう一度、美咲の頭をギュッと抱え込むように俺の胸に埋める。


彼女の不安や恐怖を、少しでも和らげてあげたかった。


実際に出産するのは彼女なわけで。


きっと男にわかんないことなんて、たくさんあるんだろうけど。


それでも、歩み寄りたかった。


俺に出来ることなら何でもしてやりたいと思った。


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