もうひとつの恋
「ううん、けんちゃんだけでも嬉しい

萌音、けんちゃんも好きだもん」


一年生ってやつはこんなにませてるもんなのか?と思いながら、俺はありがとう、ともう一度頭を撫で回した。


側でその様子を見ていた純ちゃんが、急に立ち上がって焦ったように声を荒げる。


「こら、健太!

うちの娘を誘惑するな!」


「なに言ってんだよ

いい歳してやきもちかよ」


うんざりしながらソファーの背もたれに肘をたてて頭を支える。


「や、やきもちだと!

健太、お前なぁ……」


「はいはい、ほら純もそんなことばっかり言ってると、萌音に嫌われるわよ?」


クスクス笑いながらキッチンから出てきた美咲の手には、お得意の焼きそばが乗ってる。


「健太も食べなさい」


はい、とテーブルに置かれた焼きそばは、きっちり五人分ある。


当たり前みたいに自分の分が入ってることに、俺は安堵に似た気持ちを抱いた。


「良かったぁ、また素麺かと思った」


それでもわざと憎まれ口を叩くのも、お約束だ。


「悪かったわね?いつも素麺で!」


そう言いながらも美咲の俺を見る目は優しい。


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