もうひとつの恋
そのあと二人の間に花純美が生まれて、少しだけ居場所がなくなる不安があったけど、そんなこと感じさせないほど親父は俺を可愛がってくれた。


だから感謝してたんだ。


連れ子の俺を実の娘より可愛がってくれる親父のことを……


どちらかというと、好きだったし自慢でもあった。


小学生の頃やっていた少年野球には、必ず応援に来てくれたし、キャッチボールだって付き合ってくれた。


中学に入るまではうまくいってたと思う。


少しずつそれが崩れ始めたのはあの女がきっかけだった。


純ちゃんは知っていたんだろうか?


親父に離婚歴があったことを。


「なんだよ?反抗期か?」


黙りこむ俺に、純ちゃんがからかうようにそう言ってソファーに背を預ける。


「そんなんじゃねーよ!」


バカにされてる気がして、そう声を荒げると純ちゃんはふっと真面目な顔に戻って首を傾げた。


「じゃあなんなんだよ?
ちゃんと話してくれなきゃ、こっちもお前の気持ちなんかわかんないだろ?」


確かに泊めてくれとわがまま言ったのは俺だ。


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