もうひとつの恋
言わなきゃわかんないってのももっともで……


だけどこの気持ちをどう伝えたらいいのか、よくわからない。


「俺……あの家に必要ないからさ」


ポツリと口をついてそんな言葉が漏れた。


そんなこと思ってた訳じゃないのに、口にした途端、本当にそんな気がして勝手にヘコむ。


うなだれた俺の肩を抱くように美咲がギュッと手に力をこめた。


「バカね?なんでそんな風に思ったの?

さとみも健も、あんたのこと可愛くてしょうがないって感じでしょう?

もちろん、花純美はまだ小さいから、そっちに目がいくのは仕方ないとしても、健太をないがしろにしてるようには、少なくとも私には見えないよ?」


美咲の優しく諭すような言い方に涙が出そうになる。


わかってるはずなのにそんなことは……


このモヤモヤはなんで晴れてくれないんだろう?


膝に置いた手をギュッと握りしめて、俺は唇を噛んだ。


あの女が家に初めて訪ねてきたのは確か、四年前くらいだった。


親父の離婚した相手の娘らしい。


それを聞いたとき、親父はつくづく連れ子に縁があるんだなと俺は思った。


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