もうひとつの恋
一階について、エレベーターのドアが開くと俺は課長を探してロビーを見渡す。


すると受付のところで華奢な女性が何か話しているのが見えた。


瞬間!その女性が床に崩れ落ちる。


「キャーッ」という受付の女の子の悲鳴を聞きながら、俺は咄嗟にその女性に走り寄って抱き起こしていた。


「あ……ごめんなさい」


朦朧としながらそう言って、俺に迷惑かけないように立ち上がろうとする。


俺は彼女の体を支えながら、ロビーの隅に設置してあるソファーまで運ぼうと、女性の顔を覗き込んだ。


――えっ!?


うそだろ?


何度見直してみても、その顔には覚えがあった。


以前よりも痛々しいほど痩せ細っているが、間違いない。


課長の奥さんだ……


なんで?……あぁ、そうか……


課長に面会に来たんだろう。


でも受付の女の子に課長は外出中だと言われたはずだ。


それで倒れてしまったんだろうか?


いろんな思いで混乱する頭をなんとか整理して、とりあえず彼女に声をかけた。


「大丈夫ですか?

無理しないでください

あそこにソファーがありますから、一旦休みましょう」


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