もうひとつの恋
真っ赤になったのがわかるくらい熱くなった顔を隠すように言った。


「いや……あの……

そんなたいそうなもんではないです

えっと……今日は課長に用事ですよね?

課長、今、外に昼食べに行っちゃってるんで、もうじき戻ると思うんですけど待ちますか?」


しどろもどろになりながらそう言うと、課長のことを思い出したのか、彼女の表情が急に曇り出す。


何か事情があるんじゃないかと察して、思いきって彼女に聞いてみた。


「なんか……あったんですか?

奥さん、前に会ったときより痩せましたよね?

さっきも倒れてたし、どっか体調悪いんじゃ……

もしかして、そのことで課長に会いにきたんですか?」


ストレート過ぎたかなとも思ったが、回りくどく言ったところで聞きたいことは同じだ。


彼女は苦笑しながら、自分の体型の変化に気付いた俺に、悲しそうな瞳で力なく笑う。


「あれ?わかっちゃった?
すごいねぇ、桜井君

一度しか会ったことないのに、私の変化に気づくなんて……

うちの主人なんか全然気づかないのにな」


悲しそうに笑う彼女を俺は複雑な気持ちで見つめた。


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