もうひとつの恋
玄関のドアを開けて、そのまま寝室に向かうとベッドに上着を脱いで放り投げた。
ドサッと自分の身体もベッドに預けると、ふぅ……と息を吐きながら目を瞑る。
疲れたな……
今日はいろんなことがありすぎて、頭の中がまとまらなかった。
課長の奥さんの悲しそうな後ろ姿が目に焼き付いて離れない。
あのあと得意先に課長と二人で行くことになっていたけど、俺はとても平常心ではいられなくて…
大人げない態度をとってしまった。
だけど……自分の奥さんの体調の変化に気づくのかどうかを確認したくて、 例え話として課長に聞いてみたら――
『気づくに決まってる』
課長はそう言った。
何が「俺は気付く」だ!!
奥さんがあんなになってるのに気づきもしないで……
自分のやってることさえも奥さんに庇われて……
俺は怒りを通り越して悲しくなってくる。
俺の尊敬してた課長はそんなことにも気付かないほど、あの女性に夢中なのか?