もうひとつの恋
飲み終わった空き缶を受けとると、俺はそのままゴミ箱に捨てに行く。


課長は特に気にすることなくビルの入り口で俺を待ちながら、またどこかに思いを馳せるような表情をしていた。


「すみません、お待たせしました

じゃ、行きますか?」


そう声をかけると、課長は現実に引き戻されたようにハッとした顔をする。


大丈夫かな……?


心配になりながら俺たちは得意先への道を歩き出した。




―――――…
――――…
――…



仕事を終え、自社に戻る道すがら、俺は思いきって課長に聞いてみることにした。


「課長……最近、元気ないですけどなんかあったんですか?」


少し遠慮がちにそう言うと、課長は「えっ?」というような顔で俺を見る。


「なんか前みたいに突っ込んでくれないし……

俺……寂しいですよ」


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