もうひとつの恋
「課長……奥さんは元気ですか?」

一瞬、気まずそうな顔をした課長は、すぐに普通を装って俺に顔を向ける。


「あぁ…元気だよ……

なんで急にそんなこと聞くんだ?」


確かに課長の心配をしてたのに、急に奥さんの話になったのだから、疑問に思うのは無理もない。


「だってほら……課長がそんな状態だったら、奥さんもそうとう心配してるんじゃないかと思って……」


なんとかそれらしい言い訳を思い付いてそう答えると、課長は俺の言うことを真に受けたのか、納得した様子で返事をした。


「あぁ……まあな?

心配は、してくれてるよ」


課長の様子があまりにも寂しそうで、これ以上は聞けないと判断する。


けれどそれ以外の話が盛り上がるわけもなく……


会社までの道のりをいつもより遠く感じながら、気まずい空気の中ただ黙って歩くしかなかった。


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