もうひとつの恋
一緒に暮らしているはずなのに、心配そうにそう聞く彼女に違和感を覚えながら、仕方なく聞きたいであろう課長の状況を説明した。


「いや、いつもパリッとしてたシャツやスーツも、なんだかよれてる気がするし……

若干ですけど、朝……酒臭い気がするんですよね?」


若干なんてものじゃなかったけれど、彼女に必要以上の不安を与えたくなくて、なるべくソフトに言葉を選んだ。


すると彼女は瞳を揺らしながら、何か思い当たることがあるのか考えを巡らしているように見える。


黙りこんでしまった彼女を見て、余計なことを言ってしまったかもしれないと不安になる。


「で、でも……仕事はいつも通りこなしてますし、たまたまなのかもしれないですけどね?」


俺は慌ててごまかすようにそう言ったけど、彼女はそれは自分のせいだと言わんばかりに言い訳する。


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