もうひとつの恋
ドクン!!!


俺を見つめる彼女の視線に心臓が跳ね上がる。


何か言わなきゃいけないのに、言葉が出てこないくらいテンパってしまう。


黙ったままの俺をおかしいと思ったのか、課長が首を傾げながら声をかけてきた。


「桜井?どした?」


そう言いながら、俺の顔の前で手をヒラヒラ振ってくる。


ハッと我に返り、俺を不思議な顔で見ている彼女に慌てて自己紹介をした。


「あの……課長にはいつもお世話になっております!

桜井です!

よろしくお願いします!」


やっとのことで声を出すことが出来てホッとしたのもつかの間、彼女がよろしくと言いながら、手を差し出してきた。


握手……という意味なんだろうが、今の俺にはハードルが高すぎて、躊躇してしまう。


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