もうひとつの恋
同時になにかあったんだろうかと心配になる。


「課長の奥さんですよね?
うわぁ!電話くれて嬉しいです!

あれ?でも電話してくるってことはなんかあったんですか?」


名乗ってもいないのに自分だとわかったことに、彼女はかなり驚いたようだった。


「声だけでよくわかったねぇ?

ビックリしちゃった

あ……ごめんね?今、時間ある?」


休みの日に電話したことを悪いと思ったんだろう。


彼女は俺の都合を確認するようにそう言った。


「大丈夫です

ちょうど暇してたとこなんで、気にしないでください」


すると彼女は嬉しそうな声で礼を言うと、本来の用件を少し気まずそうに聞いてきた。


「ほんとにいつもありがとう

ちょっと主人のことで聞きたいことがあって……」


やっぱり課長のことか……


当たり前だが、課長のことでしか彼女と接点がないんだと改めて思い知らされる。


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