もうひとつの恋
すると電話の向こうでホッとしたような吐息が聞こえたかと思うと、彼女は急に黙りこむ。


やっぱり……なんかおかしい……


心配になった俺は、たぶん彼女が一番聞かれたくないであろうことを、あえて聞いてみた。


「……大丈夫ですか?

家で……なにかあったんですか?」


すると彼女は慌ててそれを打ち消してくる。


「ううん、何にもないよ!

だいぶ家では眠れるようになってるみたいだから、会社でもちゃんとやっているのか気になっちゃって……

会社でのことって、あんまり話してくれないから……

ごめんね?変なこと聞いて」


頑張ってごまかしてはいるけれど、明らかになんか変だ。


俺は彼女がまた一人で悩んで、何かを抱え込んでいるような気がしてならなかった。


あの時のように痩せ細った精気のない彼女を見るのはもう嫌だ。


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