もうひとつの恋
「……言いたくないならいいですけど……

あんまり溜め込むとまた前みたいに体調悪くなるかもしれないんで……

俺、ほんとに課長にも誰にも言いませんから、ほんとに辛くなったらいつでも言ってくださいね?

ちゃんと聞きますから」


なんでもいいから頼ってほしかった。


誰にも頼るまいとする彼女の姿勢は立派だけれど、壊れてしまう前に吐き出してほしい。


「ありがと……

桜井くんにはいつも元気をもらってる気がする……」


思いがけない言葉をかけられて、一瞬で顔に血が上る。


たぶんゆでダコのように真っ赤になってるはずだ。


電話で良かったと思いながら、俺なんかで元気になってもらえるならと、嬉しくなる。


「いや、俺なんか全然役に立ってないですけど……

でもそう言ってくれると嬉しいです

少しでも元気になってもらえるんなら、いつでも電話ください」


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