もうひとつの恋
念を押すようにそう言うと、彼女は何度もお礼を言って電話を切った。


電話を切ってから、俺はしばらく放心状態だった。


彼女からの初めての電話に興奮して、よくわからないうちに切れてしまったような気がする。


耳に彼女の吐息や涼やかな声が、まだ残っているような気がして動けないでいた。


なんか……俺って変態みたいだな?


しばらくそうしていた自分を分析して思わず苦笑いする。


また連絡してくれるといいんだけど……


ぼんやりそんなことを思っていると、彼女から電話をもらったことを思い出して、急いで番号を登録した。


これで何かあれば、俺からも連絡ができる。


その番号がお守りのような気がして、俺はギュッと携帯電話を握りしめた。



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