もうひとつの恋
「お前には悪いと思ってる

何度も忠告してくれたのにな?

俺は結局……さとみを傷つけた」


「なんでなんですか?

あんなに課長を思ってた奥さんを裏切ってまで、どうして今の人と暮らしてるんですか!」


「俺だって別れたくなかったよ!」


俺の言葉を遮るように、課長が叫ぶ。


「じゃあ……どうして……?」


「さとみが出ていくって言ったんだ

別れようって……

あの二人と幸せになれって……」


課長は辛そうに顔を歪ませながら、続けて言った。


「俺は何度も引き止めたんだ

でもさとみの気持ちは変わらなかった

ずいぶん前に、俺が元気がないって、心配してくれてたことがあったろ?

あの頃、さとみに出ていかれたんだ

俺はショックで自暴自棄になってた

そんなとき……今暮らしてる二人に俺は救われたんだ……

お前は俺がさとみを追い出したと思ってたのかもしれないけど、そうじゃないんだよ」


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