もうひとつの恋
相変わらず自分のことより課長のことばかりだ。

俺は少しだけ苛立ちを覚えて言わなくていいことまで言ってしまう。


「元気ですよ?

もう別の人と暮らしてるみたいだし、子供まで一緒だって言ってました

俺は……奥さんが課長のこと大切に思ってたの知ってるつもりです

だからこそ、課長のしてることが許せない……

それなのに課長は自分の方が傷ついたみたいな顔してる……

これから俺……そんな課長と仕事してく自信ないです」


俺の言葉を黙って聞いていた彼女は、諭すように話し始める。


「桜井くん……あのね?

私は自分から出ていったの

だからあの人は、悪くない……

出来れば桜井くんにも、今まで通りあの人と接してほしいと思ってる

ダメ……かな?」


なんであんな課長を庇うのかわからなかった。


この口ぶりだと課長が誰と暮らしてるのかも知ってるみたいだ。


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