もうひとつの恋
礼を言われる筋合いじゃないと思うが、あえて反論はしないことにする。


「あんなに怒ってたのに、急にいつも通りになったから、課長の方が動揺してましたけどね?」


思い出してハハッと笑うと、彼女もつられて一緒に笑ってくれる。


その時、電話の奥で何か聞こえた気がした。


「誰か……いるんですか?」


思わずそう聞いてみると、彼女は当たり前のように答える。


「あぁ、うん

こないだ話してた私の赤ちゃんだよ?」


――えっ!?


もう産まれてたのか?


「まだお腹にいるんだと思ってました」


「先月生まれたばっかりなの

12月20日が誕生日

今、お昼寝から起きちゃったみたい」


よく耳をすましてみると、確かに赤ん坊特有の甲高い泣きがしてる。


俺はその時、純粋にさとみさんの子供を見てみたい思った。


会わせてくれるだろうか?


「あの……今度、赤ちゃんに会わせてもらえますか?」


「もちろん!」


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