Life
その少年は、例の転入生であった。私は、そっと横に首をふったあと、
「大丈夫だけど、随分と大胆な行動に出たね。私と一緒にいると知るとあまりいいように見られないよ。」
私が受け答えると少年は少し目を見開いて驚いていた。私が喋ったからだろうか。きっとそうなのだろう。私に対する少年の中の私の第一印象と言うものはよくない気がしてならない。いや、きっとよくはないのだろうが。喋らない隣の少女とでも思ったのだろうか。どちらかと言うと私にはあまり構わないでほしかった。それを知っていたのか、いや知らないのだろう。私にこの人は関わった。異性と言うものはまったくもって行動が不可解である。私と同じ同性である女子ならばどうして私に対しての行動が読めるのだが、異性となると、彼も、あの人も、この人もまったくもって理解できる範囲にいないのだ。だから、どうしてこの人が今の状況にしようとしたのか分からなかった。
すると、少年は口許を怪しく上げた。
「でも、こうでもしないと君さ、話ししてくれなさそうだし、口も開いてくれなさそうだったから強行突破してみただけなんだけど。」
私は、そっと少年を見ると相変わらずの怪しい笑みを変えず私を見ていた。最初に見せていた愛嬌のある笑顔と違って何やら企んでいる腹黒そうな笑みは私の中だけじゃなく、見せた人間のこの人の第一印象を粉々に崩してしまうだろう。現に私が崩れた。そして、こっちが本当の少年なのだろう。私というと、確かに驚いたのだが、正直にこういうのありそうだと踏んでいたので驚きもあまり大きくはなかった。寧ろこの人が私と何を話したくて呼んだのかが疑問だ。呼んだと言うよりも拉致ったって言うのが確かかもしれない。当の本人は私を目の前にして腕を組み睨みをかけていた。そんなことに動じることはないのだけれども。ただ、男性に見つめられるのは彼以外では慣れていない。ちょっとだけ照れる。そっと、顔をそらすと少年は楽しそうに口許を緩ませた。
正直にそろそろ会話を始めてもいいのではないか。そう思ったので顔を少し伺う範囲で少年の顔を見た。少年はただ空中を見つめたまま何もしなかった。でも、どうしてだか嫌じゃなかった。何も話さないでこれは終わりそうかなっておもったけど。私も、私でこの人と話すことってないから口を開くことさえなかった。ただ、人間としては整い過ぎている顔を見ることしかできなかった。すると、そんな私の視線に気が付いたのだろう少年は私をちらりと見て、
「なに。」
と素っ気無くいわれたので私は、ムッとなって少年の隣に並んで同じように壁に背中をつけると、
「別に。貴方が何も話しをしないので目のやり場に困って貴方を見ていただけですけど。」
「え。何。俺が何か話しをしなくちゃいけないの。」
(コイツ、ムカつく。)
一瞬だけ湧いた殺意はなんなのでしょうか。第一この人が私と話がしたいから今の今までチャンスを狙っていたと今言っていたはずなんですが。